近年の研究で、黄色ブドウ球菌がアトピー性皮膚炎に大きく影響していることが明らかとなってきました。
では、実際にこの黄色ブドウ球菌を除去することは、どのような影響をもたらすのでしょう。
メリットとデメリットをそれぞれご紹介します。

黄色ブドウ球菌を退治するメリット

アトピーアトピー性皮膚炎の原因として、黄色ブドウ球菌がかかわっているというのは近年の研究でわかってきた事実です。これを裏付ける根拠として、健常者ほど黄色ブドウ球菌が少なく、アトピー性皮膚炎罹患者ほど黄色ブドウ球菌を多く保持していることがわかっています。
また黄色ブドウ球菌自体がエンテロトキシンと呼ばれる毒素を排出する菌であり、傷やあせもなど皮膚が破綻した部分に入り込むと炎症を起こす菌であることもわかっています。これらから、表在する黄色ブドウ球菌を除去することで、可能な限り皮膚トラブルを減弱させる、もっというと、ことアトピーに関しては黄色ブドウ球菌を除去することで、症状の改善が大きく期待できるということができます。
実際にアトピーの症状に使用されている薬剤としてステロイド製剤が含まれていますが、これは動物由来の抗炎症作用のある物質であり、人間の体内でも産生されているものです。特にアトピーによる酷いただれや厚くちぢれた皮膚などには、このステロイドが非常に効果的です。
ステロイド自体は強い薬であることには間違いありませんが、とりわけ外用薬は含有量が少なく、内服と違って副作用がでにくいことが特徴です。症状の酷い部位に、集中して局所的に使用することで、いち早く改善がみられます。
そして、このステロイドが抑える炎症は、アトピーだけでなく黄色ブドウ球菌に対しても効果があるため、菌の退治としても適切な処方と言えるでしょう。












黄色ブドウ球菌を退治するデメリット

菌退治では逆に、黄色ブドウ球菌を退治することで生まれるデメリットというものは存在するのでしょうか。
現在の研究結果から行くと、今のところ特に見つかっていません。
常在菌なのだから、いなくなったら皮膚が弱くなるのでは、という指摘があるかもしれませんが、そもそも常在菌の中で皮膚のバリアを適切に保っているのは表在ブドウ球菌であり、黄色ブドウ球菌はどちらかというとその中でも毒素を排出する感染性のある菌であるため、種類が若干異なります。健常者は表在ブドウ球菌の割合が高く、アトピー性皮膚炎罹患者は黄色ブドウ球菌の割合がとりわけ高いのが特徴です。少なくとも、皮膚のバリアーや菌の状態を健常者に近づけるという意味では、黄色ブドウ球菌は除去したほうが適切という結論となります。
ただ、ひとつ注意しておかなければならないのは、黄色ブドウ球菌の除去にステロイドを使用している場合、黄色ブドウ球菌と一緒に表在ブドウ球菌をはじめとする善良な常在菌まで除去している可能性があることです。この場合、皮膚のバリア機能が脆弱になることは予想がつきます。
しかし、通常ステロイドを使用するのは局所的であり、全体にわたって脆弱となることは少ないといえるでしょう。内服薬のステロイドを使用している場合には、直接免疫機能の低下が見られる場合があるため、この限りではありませんが、医師の協力のもと厳密な治療計画が立てられていることですから、対象期間に集中して治療をしていきましょう。

まとめ

治療にかかわる薬剤でのデメリットはあるものの、黄色ブドウ球菌自体は除去したほうが得策であることがご理解いただけたでしょうか。科学的根拠に基づいて、しっかりと悪い原因を取り除き、アトピーを軽減していくことが大切です。