食中毒などでよく知られる黄色ブドウ球菌ですが、実際に感染すると身体にどういった影響があらわれるのでしょうか。
皮膚炎(傷口から)
食中毒で有名な黄色ブドウ球菌ですが、もっともポピュラーな例としては傷口からの感染です。
そもそも、黄色ブドウ球菌自体が常在菌として皮膚や鼻の粘膜、腸などに多く生息しているのです。もちろん黄色ブドウ球菌自体はやや強めの毒素を持っていますが、健康体であればなかなか悪さをするところまでいきません。
ところが、すりむいたり、切り傷があったりして皮膚のバリアがない部分があると、そこから簡単に入り込んでしまいます。ひどい食中毒まではいきませんが、入り込んだ周辺の組織を毒素で攻撃しますから、腫れて炎症になることがあります。
肺炎
健康な人は皮膚炎くらいでまだすむかもしれませんが、たとえば病院の中で抵抗力の落ちた高齢者や手術などをうけて管による人工呼吸器での呼吸をしている人などは、呼吸機能が低下する傾向にあります。
経口あるいは血流にのって、こうした人々の肺で炎症が起こると、それは肺炎となります。肺が腫れ、痰がたまって、呼吸自体が困難になり、ひどいときにはこれで死亡する方も大勢いるほどポピュラーな疾患です。
敗血症
皮膚や口から入って肺が炎症を起こしている状態から一歩進むと、菌が血流に乗って体の隅々まで運ばれていきます。
体内に異物が入ってきたことを察知すると、人間の免疫細胞はサイトカインという物質を出して、武器である抗体とそれを作る細胞を毒素のところまでおびき寄せます。
しかし、それが全身となると、いたるところで炎症が発生してしまいます。したがって、発熱、頻脈、呼吸困難などさまざまな感染症の重篤症状がでます。ひどいときにはショックといって、血圧が低下し、うまく血液を循環できなくしてしまいます。
髄膜炎など
血流に乗って全身に運ばれる毒素の影響は、行き着く先の臓器でも発生します。
敗血症は、いわば全身の血管内でおこる変化といえるでしょうが、たとえばそれが脳の手術を受けた患者などであった場合、障害を受けているだけにそこに菌に感染した血流が集中します。
このため、激しい熱と疼痛を呈する髄膜炎にも発展します。また、心臓などはデリケートであり、心筋の内側に感染すると心内膜炎となりやすいでしょう。
そのほか、肝炎、膵炎、腎炎など、それぞれの多くの臓器に障害が出る可能性があり、免疫システムに負けて一度黄色ブドウ球菌が血流に乗ってしまうと、どこで何が起こってもおかしくないということがいえます。
単純な皮膚炎だけでなく、呼吸にかかわる肺炎や、全身状態にかかわる敗血症や髄膜炎といった疾患にも派生する可能性があります。
私たちも、普段少しでも影響を防ぐため、清潔と健康を心がけましょう。